わけには行きませんから、自由にして下さるにしても、あれに聞かせないでやつて下さい。
母親 (涙を拭きもしないで、怒り出す)……でも弁護士の言ふには、美緒の承諾が無くては登記するわけには行かないと言ふんですから、そんな事言つたつて――。
五郎 とにかく、あれに聞かせる事は僕がおことわりします。
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母親が眼を怒らせて喰つてかゝらうとしてゐる所へ、家の方向から小母さんが息せき切つて駆けつけて来る。
[#ここで字下げ終わり]
小母 五郎はん! 五郎はん! 五郎はん! (眼の色が変つてゐる)五郎はん!
五郎 (ハツとして)あ、小母さんどうしたんです?
小母 早う戻つて! 早う戻つておくなれ! 奥さんが、又、奥さんが――。
五郎 どうしたんです?
小母 (口から何か吐く真似をチヨツとして)……早う! 早う戻つておくなれ!
五郎 (ギクリとするが、今迄に馴れてゐるので割に自分を制しながら駆け出しさうにするが)……(チヨツト何か考へてゐてから、母親と恵子に)書換への話を美緒になすつたんぢやないでせうね?
母親 ……いえ、そんな、そんな事言ふもんですか。
五郎 本当ですね?
恵子
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