りようが無いのである。みじめなみじめな姿。両手がピクピク痙攣してゐる)
尾崎 (スケツチ箱をしまひながら)僕あ、猿だよ。ハツハハ。キツ! キツ! キツ! キツとね。ヘツヘヘヘ、ヘヘ。
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間。……沖を通るポンポン蒸汽船の響。
次第に坐つてしまつた五郎。歯を喰ひしばり石の様になつたまゝ、猿の鳴き真似をジツと聞いてゐる。尾崎は又あばれられては困ると思つて横目で、五郎の方をチラリチラリと見て、少しづゝ後しざりをしながら、ヘラヘラ笑ふ。そこへ、母親と恵子が戻つて来る。
[#ここで字下げ終わり]
母親 やれやれ、砂の上を歩くと、くたびれるもんだねえ……(五郎に)お話は済んだの?
五郎 ……。
尾崎 やあ……済みましたよ。ハハ、済みました。
恵子 (五郎の様子が変なので)五郎さん、どうかなすつたの?
五郎 ……え? いや、あゝ、なに。
母親 そいで、あの、名古屋の地所と家屋の書換への事なんですけどねえ。ねえ、五郎さん(といきなり勢ひ込んで語り出す)……もともと、あれが美緒の名儀になつてゐると言ふのが、死んだあれの父親が散々道楽をして、次から次と家の不動産を金にしちや使ひ込んで
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