から、無理をなすつては、いかんぜ。後であんたがみすみす困るやうな金は貰へんぜ。いゝかね?
五郎 いゝんだ、いゝんだ。大丈夫だから。
裏天 さうかね? ……ぢやいたゞくか。これで助からあ。かゝあ大明神がよろこぶよ。ヘヘヘ、ありがたう……(紙幣を二つに分けて)これは、久我さん、あんた持つてゐな。わしらん所は三十円有りや沢山だで。
五郎 いゝんだよ、俺んとこは今要らんから、いゝんだ。
裏天 困つてゐるのはお互ひだ。さ、これを。
五郎 いゝんだつて言つたら。早く帰つて、おかみさんに渡してやれよ。
裏天 さうかい? 済まんなあ。そいぢや、……どうもありがたう(と当然の家賃を貰つて頭を下げる男である。尾崎に向つても、なんとなく頭を下げて)ありがたうがした。そいぢや又――。(鈍重ながらイソイソして砂丘を越して立去る)
尾崎 ……おつそろしく人の好いオヤジぢやないか。
五郎 (裏天を見送りながら)うむ。……おかみさんが、又、少し足りないかと思はれる位の良い人間でねえ。……俺あ、あの一家族を見てゐると時々泣きたくなる事があるよ。無智は無智なりに、あんな美しい連中が時々居るんだ。ホツとするよ。こんな所でゴ
前へ
次へ
全193ページ中63ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング