て暮してゐなはれ。五郎はんはこんな綺麗な海水帽も買うてくれはるし、奥さんが心配なさる事など、なんにもあれしまへん! さうどつしやろ!
美緒 うん……(耳を引つぱつていた手で小母さんの頭を撫でる)
小母 (自分も左手で美緒の腕を撫でゝやりながら)さうどすえ! 威張つてゐなはれや。そしたら、あてが此の弁で以てな、魚屋でも米屋でも、裏天はんでもベラベラとだまくらかして、あんじようしてあげまつさ。向うが、何かウダウダ言ふても、あてはツンボーどすよつてに、なんにも聞こえへんのどつせ。太平楽どす。アハハハ。
美緒 小母さん、ありがたう……。(涙)
小母 なんどす? ……ほらほら、又、泣かはる! それがいかん! 五郎はんおこられはるぜ。コラアツ!(眼をむく)
美緒 ……ハツハハ(こらへてゐたが笑声を出してしまふ)
小母 アツハハハ、かうどすやろ?
美緒 ……(クスクス笑ひつゞける)
小母 ハツハ、さ、お午の支度や。……だが、なんだすなあ、近頃兵隊さんチヨツトもお見えになりまへんな? 兵隊さん見えんと五郎はん、なんやら寂しさうにしてはります。どうぞなさつたかいな? もしやすると、いきなりもう出動なさつ
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