。そいぢや、又……(もう帰る気だ)
五郎 ま、待つてくれ、裏天さん、まあ、待つてくれよ、そいぢや、あんたの方だつて――(気の毒で気の毒で、此方がアワを喰つてゐる)
裏天 又、そねえな事を言ふ。目の前で裏天なんて言ふなて! ヘツヘヘヘ(尾崎に)やあ、……ごめんなして……(ノタノタ行きかける)
五郎 待つてくれ、それぢや、あんたの方も困りやしないかね? そんなムヤミと親切な事ばかり言つてくれたつて、そいで、あんたの方は――。
裏天 やあ、ま、いゝさ。どうにもならなかつたら、首でもくゝつておつ死んぢまうか。ハハハ、なんしろ、町に白木屋の支店のデパートが出来て以来と言ふもん、荒物の店なんかサツパリあかんやうになつてしまうてね、ハツハハ、そこへ持つて来て主な品物の値段が統制されてから此方、店を開けてゐればゐる程損になる月が有つてのう。国策ぢやと言ふから諦めとるが、さて、どんな勘定になるもんか、どうもこんな有様では今にえらい事になりさうなんで、も一月ばかり様子を見た上で、あかなんだら、店じまひをしてしまうて、田舎で百姓しようと思ふとる。さうなりや、あんたに貸してゐる家なども売つて行かなならんが、さ
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