面よりや、いくらか高えと思うちよるんぢやからなあ。気い悪くするよ。ヘヘヘ。
尾崎 (クスクス笑ふ)ヘヘヘ、ツラの地面より高いは良かつた……(五郎に)近所の人なのかい?
五郎 (裏天に)……いつも済まんけど、もう少し待つてくれんかなあ。
裏天 今、家の方へ行つたが、又あのツンボのおつかあが出て来て、ベラベラやるんだけど、どうにも話が通じねえで困つたぞ。あんなに喋りまくられたんぢや、此方で何か口を出す暇なんか無え。
五郎 済まなかつた。……実は、今、金がまるつきり無いんで、……もう半歳以上たまつてゐるんで実に申訳無いと思つてゐるんだけど……それに荒物の借りも相当溜つてゐるしね。
裏天 なあに、金の無え時あ、誰の身も同じ事だ。クヨクヨしたつて仕方が無え。わしらの所でヒツパクさへしてゐなければ、どうせあんなボロ家だもん、家賃なんか半歳一年溜めて呉れたつて、こんな事言やあしねえよ。……どうも悪い時あ悪い事が重なるもんで、仕様が無えのう。かゝあがヤイヤイ言ふもんだから、かうして来るにや来たけど、まあ久我さん、クヨクヨしたつて始まらねえ、万事なるやうにしかならねえからな。……奥さん大事にしてあげなよ
前へ
次へ
全193ページ中59ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング