民間の美術団体も大部分合流する事になつてる。新水会も多分そこへ解消する筈なんだ。ところで、解消する場合、今迄の新水会の頭株の連中が文部省展覧会の中でどんな風な位置を与へられるか。みんなやつぱり、こいつは大事だからね。今迄新水会で威張つてゐたのが、官展になつて急に追ひ落されたくはないやね。第一下手をすると飯の食ひ上げだもんな。それで目下の所、会の中で出来るだけ有利な地盤を固めて置く必要が有るんだ。内部の暗闘が急に盛んになつたわけだよ。ところが、明石、室井、水谷の三頭目なんだが、こん中から官展の審査員に推されるのは多分一人だ。すると、明石、室井に較べると水谷さんは経歴こそ稍々古いけど実際の勢力から言つてチヨツト分が悪いんだよ。人望の点では室井に押されてるし、弟子や支持者を沢山持つてゐると言ふ点では明石さんに劣るしね。第一、門下生に持駒が少い事が一番の弱味なんだ。毛利さんを筆頭に十人以上も息のかゝつた会員が居るにや居るが、毛利さんぢや腕は有つても、少し画が古くなつたしね、何と言つても新しい魅力の有るスタア級の水谷派が一人も居ない。フオーヴやシユールがゝつた連中が二三人ゐるけど、まだチヤチだし
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