めんどうな話らしいぢやないか。そんなら僕あもう帰つてもいゝよ。
五郎 さうか、済まなかつた。とにかく月末まで待つてくれ。必ずなんとかするから――。
尾崎 しかし、なんだらう、何とかすると言つても結局好文堂の仕事を余分にさせて貰ふんだらう?
五郎 うんまあ、それ以外に差当り方法は無いから――。
尾崎 まあ月末にや、とにかく当てにして来て見るにや来て見るつもりだけど、でも僕の方の事だけなら、あんまり無理をしてくれなくともいゝよ。僕の言つているのは、君が毛利さんのすゝめを無にして水谷先生の方をうつちやる事になれば、毛利さんだつてあんまり良い気持はしないだらうし、もともと毛利さんは好文堂では仲々顔が利くらしいから、君のそつちの方の仕事もまづくなるんぢやないかなあ?
五郎 ぢや、仕事をことわるとでも言ふのかい?
尾崎 さあそんな事も無いだらうが、事変以来絵が売れないで困つて内職を捜してゐる画描きがいくらでも居るからなあ。
五郎 ……まさか、あの毛利がそんな酷い事はしないよ。そんな点では彼奴は絶対に信頼の出来る男だよ。
尾崎 さうかね。……でも結局どう言ふんだね、絵本の方は描いて水谷先生一派には
前へ
次へ
全193ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング