に丸坊主になりましてな。尼さんが一人でけました。
恵子 (笑ひながら)そんな非科学的な物、駄目よ小母さん。
母親 蛇なんて、迷信だよ、あゝ。
美緒 ……(小母さんに向つてニコニコしながら、その顔を撫でゝやる)
小母 そうどすえ! えらい精の強いもんどす。五郎はんは、わてがさう言ひますと、目に角を立てゝ怒らはりますけど、わてが生き証拠どすよつて。……もつとも、五郎はんが反対しやはるのは、奥さんを丸坊主にしてしまうのがお嫌やなんどす。わてにはチヤーンとわかつてゐますがな! なあ奥さん。
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会話はトンチンカンなまゝで進行する。母親も恵子もそれから美緒までが、それぞれの気持で笑ふ。当の小母さんも美緒が笑ひ出したのが嬉しくつてゲラゲラ笑ひながら、食物を美緒に養つてやりつゞける。
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小母 さうどすえ! 奥さんが尼さんになつてしまはるのを、五郎はん、いやがつておいやすのや!
母親 ハツハハ!
2 浜で
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もともと第三流どころの海水浴場で、殆んど設備らしい設備も無い海岸なのが、今は既に真夏も過ぎて、さびれ切つてゐる。
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