かい?
美緒 利ちやんは何も言ひません。……でも母さん此の前にもチヨツトそんな事言つてたし、……此の間から五郎に何度も手紙をよこしたのは、その事なんでせう?
母親 私の手紙をお前も読んだのかえ?
美緒 読みはしないけど。……五郎は手紙が来た事だつて言はないんです。……たゞ私がそんな気がしただけ。
恵子 (若いだけ母よりも敏感で、姉が底の方でかなり昂奮してゐる事を見て取つて)いゝぢやないの、母さん、来るさうさう、姉さんまだ御飯を食べてゐるのに、そんな話は後にしたつて。
母親 えゝ、そりや何も急ぎはしないけどね、キマリを付ける所だけは早くキマリを付けとかないと、利男だつてもう直ぐお嫁を貰はなくちやならない身体だから……。
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 言つてゐる所へ、五郎がお代りの椀と、それに更に新しいお茶の皿を持つて台所から出て来て庭に下り、美緒の傍に来る。
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美緒 そりやさうだわ。だから私――。
五郎 なんだ?……なんの話?
母親 いえね、こないだ中から言つてよこしましたね、名古屋の方の例の――。
五郎 (ハツとして、相手をさへ切つて)いや、それは、後で僕が詳しく伺
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