、利ちやんは、気が早くつてどうも……(返事に困つてゐる)
母親 なに事も気のもんですからねえ。ね、恵子、この前よりも姉さん太つたぢやないか? この分なら、なあに、直ぐによくなりますよ。
美緒 (相変らずの母親の粗雑さにウンザリしながら、仕方なしに)さう、太つたでせう? 今にお母さんより太つて見せるから……(笑はうとするがベソをかいた様になつてしまふ)
母親 熱はどうなのかね? まだ有るの?
五郎 有るにや有りますけど、大した事は無いんです。……(膳を椅子のスソに置き、椀を二つばかり持つて立つて行きながら)僕、おかはりをついで来るぜ。(台所へ去る。そこで小母さんと二人でゴトゴト何かしてゐる)
恵子 (見送つて)五郎さんも大変だわねえ。
母親 さうさ。良くなさるよ。ふだんが偏屈なだけに、なんでもやるとなるとわき目もふらずやる事になるんだねえ。美緒さんも仕合せだよ、ね!
美緒 ……(母や妹にアツサリ夫を褒められるのが気に入らない。あなた方に五郎の事が何がわかるものかと言ふ気がある。冷笑を浮べて)さうかしら?……さうでも無いわ。随分乱暴な時もあつてよ。私が大きな声で喋つたりしてゐると、いきなり
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