つてしまふとかで、捜してもなかなか無いのよ。亀屋に二つ三つあつた中から、ヤツと分けて貰つたんですの。無くなつたら又送つてあげるから、姉さんウンと食べるといゝわ。
美緒 ありがたう。……でもそんなに送つてくれなくともいゝのよ。ちつとも不自由はしてゐないから。
五郎 津村さん御元気ですか?
恵子 えゝ、なんですか会社の方が、又役が一つふえたもんだから、とても忙しがつて。一度あがらなくちやと言ひ暮してゐるんだけど、つい失礼しちやつてて。よろしくと言つてゐました。
美緒 又着物こさへたのね。……変つてて綺麗だこと。
恵子 さう? 姉さんに及第すりや大したもんね。お友達と一緒に下絵を選んでわざわざ染めさせたの。物が何だか判らない所がミソなの。チヨツト大した物みたいでしよ。実は安物よ。津村はケチで駄目。
小母 (盆に茶椀を載せて持つて来て恵子に)ようおこしやす。どうぞ――。
恵子 小母さん、いつも大変ですわね。
小母 へえ、今日も良いお天気で。天気がえゝと奥さん此処で御飯あがれますので、気分良うて、助かります。お茶を一つ。
恵子 どうぞお構ひなく。私、ちつともノドは渇いてゐませんから。
小母 (聞
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