も言へず、ハンカチで美緒の頬を拭いてやつてゐる。昂奮をしづめてやらうとして美緒の手を撫でゝやる。……間。五郎が玄関から戻つて来る。
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五郎 ……(容態にさはりはしなかつたかと、ジーツと美緒を見詰めながら、努めて落着いた調子で)馬鹿だよ。……だから、言はない事ぢや無いんだ。……それに愛してゐたなんて、キザだ。わかり切つてゐる、そんな事。……第一、ゐたと言ふのは全体、なんだよ? ゐたとは過去のことだぞ。阿呆!
小母 少し水で冷しなはるか?
美緒 ……いゝの……なんとも……無い。
五郎 いや……小母さん、水汲んで来て下さい。(小母心得て台所へ去る)……苦しくは無いか? (脈を取る)……。
美緒 ……平気よ……あゝ……嬉しかつた。……
五郎 平脈だ。……でも喋るなと言つてあるのに、馬鹿だ。……でも良い子ばかりだな。……シヤクリ上げながら駅の方へ行つた。悲しいよりも、久し振りにお前を見て、うれしいんだよ。……あんな子達を何十人となく、お前は育てたんだ。あゝしてグングン大きくなる。……すばらしいぢやないか。やがて大人になり、みんな働いて、その内に子供を生む。……明るいよ。ク
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