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短い間。
[#ここで字下げ終わり]
美緒 ……。なんか……読んで……。
五郎 そうか、よし。万葉をやろう。俺の解釈を馬鹿にするときかんぞ。あれでいゝんだからな。……(奥の床の間に置いてある万葉集を持つて来て、椅子にかける)えゝと……(と言つて書物の頁を繰りながら、その手の匂ひを時々かいでゐる。なまぐさい蛇の匂ひがこびりついてゐるのである)よしか? (そんな匂ひも、それから一切の感情をも吹き飛ばす様に、開いた所をいきなり朗読し始める。自己流のブツキラ棒な節を附け、声だけは朗々と高い)隠口《こもりく》の泊瀬《はつせ》の国に、さよばひに吾《あ》が来ればたな隠《ぐも》り雪は降り来ぬ、さぐもり雨は降り来ぬ、野《ぬ》つ鳥、雉《きぎす》はとよむ、家つ鳥、鶏《かひ》も鳴く。さ夜は明けこの夜は明けぬ、入りて吾《あ》が寝む、この戸|開《ひら》かせ、……いゝなあ! 入りて吾が寝むこの戸開かせと言ふんだ。……泊瀬と言ふ所に住んでゐる恋人の家へ、夜通し歩いて自分はやつて来た。……今の夜這ひと言ふのとは少し違ふだらうな。つまり恋人の所へ泊りに来る事だ。すると、やつぱり似たやうなもんか。
美緒 …
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