どうしやはるのどす?……キビの悪い! チラツと見たばかりでわてはゾーツとして、ゾーツとして、ホンマに! それ、どうしやはる? 画に描きはるのどすか!
五郎 (美緒に聞えるから黙つてと手真似)……(低い声で、手真似をして)食ふんです。黒焼にして。
小母 (これも低い声で)へつ? あんたはんが? それを――?
五郎 ……(黙つて黙つてと手真似。それから、いや自分ではない、美緒に食べさせるんだと、病室の方を指して手真似)
小母 (声をひそめて)……そりや、わては、前からすゝめてきましたけど、五郎はん、そないな事いけん言うて反対してゐなはつたのに、急に又――?
五郎 ……(フタをねぢ込みながら、黙つて黙つてと手真似。その拍子に、もともと持ち勝手の悪い空鑵が手からすべり落ちて、構に倒れてフタが開き、その中から一匹の蛇が飛出して縁の下へサツと匐《は》ひ逃げようとする)……畜生……! (と口の中で言つて、いきなり掴みかゝつて、蛇を地面に叩きつける。あがつてゐるので、なかなかうまく行かず、一二度手元が狂つて縁側の上のカンバスの生がわきの画面に叩き附けられた蛇がピシリバタリと鈍い音を立てゝ、油絵具だらけ
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