よ。……(と努めて美緒の考へを他へ転じやうとして)ところで赤井は、もう行つたかな?……さうだ、こないだ赤井が来た日の夜からお前熱を出したな?……あれ、どう言ふんだい? 病気はチツトも変つて来ないのに、なんで、あんな出しぬけに熱を出す? え?……第一、なんであんなにイライラしたの? あれで熱が出たんだよ。どうして、あんなにイライラしたい?
美緒 ……だつて……散歩に行けと言ふのに……あなた……行かないから……。
五郎 だつてお前、それだけの為に、あんなにジレる事あ無いぢやないか。そりや、伊佐子さんと赤井が二人きりでユツクリ出来るのは、あれが最後だつたかもわからないけど、俺だつて赤井と話すのは最後かも知れない。一分間でも一緒に居たいやね。それをお前は無理に追ひ出さうとするんだ。
美緒 ……だつて、……夫婦よ。……それで……。
五郎 そりや解つてるよ。だからさ――。
美緒 あなたには……わからない……私は……赤井さん達……ホントの二人つきりにして……ゆつくり……させたかつた……のよ。
五郎 だからさ、だから俺あ――(と言ひながら美緒の顔を見詰めてゐたが、急に何かを悟つてポカンと口を開ける)…
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