の前で赤つ耻を掻く気でゐりや、なんでもやれらあ。どうせ、出来そくないの人間だ。恥も外聞も構はず、どうぞなんかやらして下さいと土下座して頼めば、なんか有るよ。……ハハ、お前知つてるか? 南北と言ふ人の「累《かさね》」と言ふ芝居の中にね、伊右衛門と言ふ悪党が出て来るんだよ。いゝかい? そいつがなあ、かう言ふんだ。「首が飛んでも死ぬものか!」
美緒 ……いえ、好文堂の事は……仕方が無いとしても……そんな事で……毛利さん達と……仲が悪くなつてゐては……あなたが……今後……画の仕事の上で……途がふさがる。……それが……私……心配……。
五郎 ハツハハハ、何を言ふか! 俺あ画を描いてゐるんだぜ。カンバスでタイコを叩いてゐるんぢや無えんだ。糞でも喰へ。……な、これが俺の画だ。これは、画だらう? さうだらう?……なら、それでいゝんだ。
美緒 ……でも。
五郎 もう言ふな。お前もその気になりやいゝんだよ。……(わざと芝居のセリフじみて言ふが毒々しい位の真実をこめて)首が飛んでも、死ぬものけえ!……ハハ。第一、俺の友達にや、赤井だとか須崎だとか藤戸などと言ふ素晴らしい奴等がチヤンと居てくれるよ。大したもん
前へ
次へ
全193ページ中168ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング