拝みなはれ、あんな良いお婿はんは三千世界捜しても居やはらへん!
美緒 いえ、あのね……(とまだ何か言はうとするが、数語を言つたためにガツクリしたのと、自分の声ではどんなに小母さんの耳の傍で言つても、到底きこえさうにないために、話すのをよしてしまひ、涙ぐんで、うなづいて見せる)……(しかし又、フト思い附いて、小母さんの片手を取つて、その手の平に指で仮名を書きはじめる)……。
小母 (掌を見ながら)わ……た……し。わたしどすか?……わ……し……や……わ……せ……よ。わしやわせよ、とはなんどす?……あゝ、わたしは、しやわせよ、どすかいな? さうどすとも! さうどす!
美緒 ……だから、もう……いつ死んでも……いゝの。……だけど、その後……五郎は……どうなるの。
小母 (やつぱり通じない)さうどす! さうどす! 奥さんは仕合せや! 又、奥さんみたいなお嫁さん持つて五郎はんも仕合せや! しやあからな、しやあから、早う病気良うならはつて、今にピンシヤンして、今に、わての事、たつた一度でいゝさけ、東京歌舞伎のえゝとこ、見せに連れて行つてくなはれや! な!
美緒 ……(ガツカリして、微笑して小母さんを
前へ
次へ
全193ページ中161ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング