見守つてゐるだけ)
小母 なあに、いんまに、もう間も無く、秋になりまつせ。そしたら涼しうなつて、奥さん、直ぐに良くならはります。直ぐにもう秋どす!
美緒 ……(何か言ふのはもう諦らめて、片手を出して小母さんの頭を撫でゝやる)……。
小母 (自分も美緒の左手を撫でさすりながら)……そしたら、ムクムク太らはる! うまい物、五郎はんにタント買つて貰はつて、うーんと食べて、キレーにならはつて、な!
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間。…………
 五郎が下手から庭を廻つて戻つて来る。相変らず憔悴し切つた姿だが、顔の表情には、今までとは更に違つた思ひ決した様な所がある。看病の隙に僅かな時間を割いて、近くに絵を描きに行つたと見え、左手にスケツチ箱とイーゼルを下げ、右手に七分通り描き上つてゐる三十号のカンバスを下げてゐる。ひどく疲れてゐるらしい。スケツチ箱とイーゼルを湯殿の前の廊下に置いてから、美緒に自分の疲れてゐる様子を見せまい為であらう、暫らくそこに立つたまゝ片手で両眼を蔽うてゐる。
 音を聞きつけて、病室の美緒が眼をそちらへ向ける。
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小母 (美緒の視線を追つて)……あゝ、五郎は
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