……いえな……いえ、わては、あんな情のきついお方、実は、きらひどす。たまにお見えはつても、キツと庭の方で、スパスパスパスパ(と煙草をふかす真似)こうどす! ハハハ。いくら病気が嫌ひと言やはつても、たつた一人つきりの実の姉はんでおまへんか! きらひどす。わては旧弊人どすよつて、あんな方は虫が好きまへん。あれよりも、比企先生のお妹さんの方がまだましや。テキパキしてなはる! はあ、さうですわ! はあ、わては海岸に行つてよ、ピーン、バタバタツ! (と跳ね上る真似)こうどす! な! ハツハハハ、……比企先生も、東京に帰らはつて、もう四日になりますなあ。比企先生は、奥さんの具合が良うおなりはつたので安心してお帰りたのどすわ。
美緒 ……。
小母 ……五郎はん、お戻り、おそおすな。今日は描いてしまはるつもりでつしやろ。写生と言ふもんは、お骨の折れるもんだすなあ、今日で三日や。……でも、よろしおしたなあ。五郎はんが油絵描きはるやうになつて。
美緒 ……(何度もうなづく)
小母 五郎はんも、奥さんの病気が良うなつたので安心して写生しに行かはるやうになつたのどす!
美緒 ……(微笑。指で自分を指して見せる
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