べんして下さい。失言だ。あやまる。あんたに今見離されたら美緒は――。どうか許して下さい。(砂の上に坐つて、手を突いて詫びる)
比企 (その姿をジツと見おろして、怒りのためにブルブル顫へながら、しかし口調は静かに)……いやイデオローグとしては、僕は君の言ふ通りの人間かもわからないんだ。いゝよ。しかし科学者として良心だけは持つてゐるつもりだ。君は、先刻本当の事を知らせて呉れと言つたから僕も正直に言つちまふ。もつとも、これは科学者としての僕だけの観察だから、それを信じようと信じまいと君の自由だ。つまりプロバブルな事だと言ふに過ぎないからね。それから、これは僕が君に対して悪意を持つてゐる為でもない。君の奥さんに就て僕が診断を下すのも多分これが最後だらうと思ふから、医者としての責任からも、後で君にうらまれないためにも、此の際ハツキリ言つとく必要があるからだ。……君の奥さんはね、僕の所に一番最初に連れて来られた時に既にかなり悪化してゐたんだ。僕は黙つてゐたが、実は半歳もてば良い方だと思つてゐた。……僕は正直な事を言つてゐるんだよ。……それを、かうして既に二年ちかく、とにかく、なにして来たのは、やつ
前へ
次へ
全193ページ中151ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング