顔でニヤリと笑つて)全体、あんたは昔からさうなんだ。口でこそ社会科学がどうのこうのと言つてゐたが、実はそれも例のプロバビリテイだつたんだ。確信も信念もなんにも有りやしない。たゞなんとなく流行に乗つて新興医学者らしい顔をしたかつただけだ!
比企 君は何を言ふ積りだ?(次第に怒り出してゐる)
五郎 (自分が何を言つてゐるか、筋道がシドロモドロになつてしまつて)さうなんだ。だから、今でも、変な金主を見つけて診療所なんかやつて儲けてゐる現在になつても、ソツクリ以前通りに社会医学だとかなんとか、要するに自分の利益に関係の無い範囲のゴタクを並べてゐるんだ! それが全体、なんだ!
比企 ……久我君、君あそれを本気で言つてゐるの?(此の男として一番こたへる所に触られたと見えて、言葉はおだやかだけれど真に怒つてゐる)
五郎 本気?……いや(フツと我れに返つて)いや今のは僕の言ひ過ぎだから、かんべんして下さい。言ひ過ぎだ。(みじめな姿である)
比企 (青い顔でニヤリとして)君が僕の事をそんな風に思つてゐるとは知らなかつたよ。
五郎 いや、僕が悪かつた。いろんな事で頭がこんぐらかつて、悪くしてゐるんだ。かん
前へ 次へ
全193ページ中150ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング