十四貫五百か。……(まだ京子の身体から眼を離さない。ギラギラとして殆んど残忍な眼光である。画家として久し振りに美しいヌードを見たシヨツクと、永い間抑圧されてゐた男としての刺戟の[#「刺戟の」は底本では「剌戟の」]こんぐらかつたものである)
京子 (少しモヂモヂしながら)……そんなに御覧になつちや困るわ。
五郎 あゝ、いや。……ハハ(と、痙攣する様に短かく笑つて、平手で顔をゴシゴシこする)……失敬。
京子 何を考へてゐらつしやるの?
五郎 え?……あゝ。……僕が今なにを考へてゐるか、わかりますか?
京子 そんな事わかりやしないわ。
五郎 ……美緒の身体の事を考へてゐるんです。あいつの目方の事ですよ。十四貫五百。……あなたは十四貫五百あるが、彼奴はいくらあるかなあ。十貫……いや、そんなには無い……八貫……いや、もつと軽い、七貫位かな。とにかく恐しく、軽いんだ。僕の片手で、持ちあがるんですよ。元来、肥えてゐた方なんで、丈夫な頃は十三四貫はありましたよ。今は七貫位……あなたの半分――。
京子 七貫なんて、そんな……。だつて、どうしてそれがおわかりになるの? かゝへておやりになるの?
五郎 かゝ
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