からユツクリ分配すりやいゝんですよ。
五郎 いや、美緒が現在の様な有様だから、もし万一の事があつたらと、お母さんとしては心配になるのは無理は無いかも知れないんだ。……でも、兎に角彼奴は恐しく神経質になつてゐるからね。たとへば僕が彼奴の病状を心配してゐるといふ事をチラツとでも感附かせただけで、もういけない。ピリピリツと反射して行くんだな。恐しい位だ。それを押へつけて、彼奴の気持を安静にしとく為には、絶えず病人の神経の届く範囲に先廻りをしたり、裏の裏をかいたり、とにかく彼奴よりも強い神経でピシリピシリとのしかゝつて押へつけて行く以外に手は無いんだ。西洋の医者で「結核は呼吸器病と言ふよりも精神病である」と言つてゐる奴があるが、全くだよ。……それ位なんだからな。
利男 とにかく母には今後その話は絶対にさせない事にしますよ。
五郎 いや、僕あね、なるべく早く、その書換への書類に美緒に印を捺させてしまはうと思つてゐるんだ。……どうせ利ちやんがとめてくれた位で話を控へてくれるお母さんぢや無い。いや悪く言つてゐるんぢや無いぜ。どうせさうなるもんなら一日も早くさうしちやつた方がいゝからさ。

利男 ……
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