ても止める暇もありやしないものな。……自分の娘みたいな気になつちやつてるんだな。
美緒 娘以上よ。……私なんぞ、小母さんが居てくれなからうもんなら、トツクの昔に死んぢまつてるわ。
五郎 ……へん。お前より、俺の方が先きに死んぢやつてら。
美緒 ……(五郎の顔をマ[#「マ」に「ママ」の注記]ヂマヂ見守つてゐる)……ホントにあなたも、少し休養して頂戴な。痩せたわ。
五郎 俺は少し痩せて良い男になるつもりだ。蓮池あたりの娘さんや後家さん連中を少し唸らしてやる。
美緒 どうぞ。
五郎 お前は本当にしないが、これで仲々もてるんだぞ。二三日前も市場の角でタマネギを買つたら、あすこの娘さんがリユツクサツクの中に一つだけ余分に入れて呉れた。奥様がお悪くつちや、お大変ですわねえと言ふんだ。ホロリズムは利いてゐる。あれは、もう一押しで物になるね。
美緒 御遠慮なく、押してね。……でもどんな娘?
五郎 それ見ろ。べつぴんだぞ。惜しいことに、少しビツコでね。
美緒 フフフ……。(笑いながら軽く咳く)
五郎 そらそら、もう黙つて。……噛みやうが、まだ足りない。フレツチヤリズム、フレツチヤリズム。呑み込まうと思ふ
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