。ホーレン草がよく有つたなあ。どうする庭へ出るかい?
美緒 ……(コツクリをする)
五郎 小母さん、すみませんが椅子の方を――(と美緒の肩と両脚の下に手を入れて、ソーツと抱きかゝへる。小母さんは椅子をかゝへて、庭の樹の下へ運んで日蔭に据ゑる)
美緒 ……(海水帽を指して)あれを――。
五郎 いゝぢやないか、陽は当らないよ。
美緒 うゝん、かぶるの。……かぶるのよ!
五郎 しようが無えなあ。小母さん、それ取つて。
小母 へ? へいへい、奥さんの大事な大事なシヤツポや。(取つてかぶせてやる)これ、かぶらはると飛んだ別嬪はんに見えまつせ。
五郎 (庭へ下りて、美緒の身体を動揺させぬ様に運んで行きながら)そら!
美緒 ……(帽子の下でニコニコしながら)軽くなつた? 重くなつた?
五郎 さうだなあ。昨日よりも八匁だけ重くなつた……。(ムツと怒つたやうな顔になつてゐる。美緒の身体がひどく軽いのには、馴れつこにはなつてゐても、その度に何かドキリとする気持を押しかくすのに努力を要するのである)やれ、どつこいしよ!(美緒を椅子の上に静かに臥せ、腰から下を毛布でくるんでやる)
美緒 ……きれいな空! (シ
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