頼と言つたやうなものだな。そいつは、やつぱり無くなつてゐないんだものな。僕あ、兵隊に行つて、そいつを痛感するんだよ。僕がもし兵隊として幾分でも秀れた兵隊だとしたら、そりやみんなそのせゐだよ。事実、僕あ中隊長その他の上官から非常に信頼されてゐる。同じ兵隊仲間や、そいから僕の部下だつて――これでも部下を持つてるさ、伍長殿だからね――どう言ふんだか僕の事を一番信頼してゐるんだよ。自分達が困つてゐる問題は必ず僕の所へ持つて来るし、そいから仲間同志で喧嘩をしてもその決着をつけには必ず僕の所へ来るんだ。自分達の気持を一番よくわかつて呉れる仲間として全然信頼してゐる。不思議な位だよ。はじめは、どうしてだか僕にもわからなかつた。唯単に僕の生れつきの性質の良さと言つたやうなものぢや決して無いんだよ。その内に、ヒヨツと、そいつは若しかすると、今言つた、あの時代に鍛へ上げて来た本質的なもののためぢやないかと思つたんだ。
五郎 さうだ! さうかも知れん。いや、さうだよ。それと言ふのがあの時代を俺達がホントに生きて来たためだ。良かれ悪しかれ生きて来た、そこから一切が生れて来てゐるんだ。あの時代の俺達を批判するこ
前へ
次へ
全193ページ中101ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング