vの工合が又悪くなったんですよ。ホントにしようがない――。(炊事場に置いたバケツからコップに水をついで柴田の所へ持って来る)はい。
柴田 ありがとう――
清水 これは――(と床の上に置いた包を持ちあげて)クラスの者から、先生に差しあげてくれ――ジャガイモです、すこしですが。皆で持ち寄って、もっとたくさんにしてとも話し合ったんですが、持ち寄ると言っても、どうせ買って来る――するとけっきょく闇で、先生お食べにならんから、なんにもならん。――そいで、しかたがないので、グランドのクラスの畑に出来たのが、まだ残っていたもんですから――。
柴田 ……(あきれたように、口をすこし開けて清水を見ている)
せい ……(手早くヤカンに水を入れ、火を燃すために、そこの薪を小さく割ろうとして手斧を取りあげたまま、清水の言葉を聞いていたが)まあ、ねえ!(パチパチと眼ばたきをしていたが、着物の袖で涙を拭く)……それ程、先生のこと思って下すって。
清水 (吐き捨てるように)なあに、これっぱっち、なんにもなりません。
せい (寄って行き、ていねいに頭を下げて、包をいただいて食卓の端にのせる)……皆さんによろしくお礼を
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