釜bしてくれんと――
清水 先生、講義をつづけてください。
柴田 うむ――そりゃ、しかし――
清水 Bクラス全員の希望です。Aクラスでも、そいから全校のみんなが希望しています。
柴田 ――しかし、そりゃ――だが、私の単位は今学期は取らなくてもパスさせる事になっていると教務の方で――
清水 パスするしないの事じゃないんです。先生の講義をみんな聞きたいんです。
柴田 ……だがね、私は、とにかく、休職願を出していて――
清水 それを引込めてください。
柴田 ……そいつは、どうも――(指の先で額にこびりついた泥をこすっている。清水は上体をまっすぐに椅子にかけて、相手を正面から見すえている)……うむ。……まあ、しかし――どうだね、君の腕はその後? もう痛まないかね?
清水 ……(表情も動かさぬ)
柴田 胸にも、たしか貫通銃創を受けていたね? そっちの方は、もうスッカリ――?
清水 ……(平然としている)
柴田 うむ……(相手がだまっているので困って額をこすったり[#「たり」に「ママ」の注記])
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(せい子がバケツをさげて戻って来る)
[#ここで字下げ終わり]
せい ――ポン
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