双葉 なんか、無電の方で水雷に乗り込んで――
圭子 ふーん……。
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(そこへ、奥の出入口から、疲れ果てたせい子が戻って来る)
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双葉 ……お帰んなさい。
せい ああフーちゃん。……(食卓のわきの椅子にかけて、溜息をつく)
双葉 どうしたの?
せい ……どうしても返してくれない。
双葉 え?
せい (それには答えないで)……そいで、フーちゃんの方どうでした、なんか買えて?
双葉 ……駄目。みんな二千三千という現金を、前もって、なんにも言わないで、お百姓のうちへ置いて来るんだわ。そこい又、布地だとか地下足袋なんぞ持ってってやるんですもの。三十円や五十円持って私たちが行ったって、はなも引っかけてくれない。
せい ……でしょうねえ。――配給所の方も昨日も今日も私聞きに行ったけど、いつになったら入荷するか、けんとうが附かないと言うし。……欣二さんの買って来て下すった麦も、おとついでみんなになって――明日の朝から、まるでもう、なんにも無いんだけど、ねえ双葉ちゃん、……どうしたらいいかしら?……(双葉答えず。せい子の背後に位置していた圭子が、その時身じ
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