下で、どっかしら、みんな身体が歪んじゃってる。歪んじまう位に弱いのね。――そして、弱いのは、私どもが低いからじゃないかしらと思うもんだから……(大皿を持って食卓の方へ行き、並べられた食器の間に置く)
圭子 弱いのは事実らしいわね。(ユックリと室内を歩きながら)しかし、全体が高いからとか低いからとか言われてもまるで夢のような気がするけれど。さしあたり、こんな風になっちまってる私など、生きるためには、それこそどんな事をしても、生きなくちゃならないのよ。
双葉 それはそうだわ。……私だって、近い内に働きに出ようと思っているの。私も圭子さんに教わってダンサアになってもいいけど、これじゃ、ねえ。こないだも、道で小さい子が、私の顔を見て、こわがってね、一緒に居るお母さんになんと言ったと思って? ふふ。だもの、だあれも私と踊ってなんかくれるもんですか。(アッサリとした言い方だが、圭子はなにも答えられないでいる)……だけど、圭子さんが、ご自分の事を直ぐに「私なんぞ」とおっしゃるの、私、不賛成だな。
圭子 ……だって、そりゃあなたが、私達のくらしをお知りんならないからだわ。一口にダンサアと言っても色々で
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