ちの程度がまだまだ低いから、それが世の中がグラグラするたんびに、本性がさらけ出されて来るんじゃないかしら。仕方がないと思うの。当分がまんして、私たちみんなの程度の低さを、なんとかして高めて行くほかに、しようがないんじゃないかしら。
圭子 そうね。……(双葉の出した大皿に、ボールの菜をしぼって水を切って、ほぐして並べる)だけど、双葉さんなんか、まだ若いし、とにかく、こうして落着いていらっしゃれるから、うらやましいわ。私なぞ、いくらそうは思っても、もう、しようがないのよ。自分のことだけで、やりきれなくなっているんだわ。
双葉 ……いいえ、私なぞに、そんなえらそうな、人の事がどうのこうのと言えるもんですか。結局は自分の事なの。ただしかし、その自分も日本人の一人だし、日本人全体が背負っている荷物は、その一人分だけは自分も背負っているし……自分の低さが結局日本人全部の低さじゃないかしらと思うもんだから。……私もそうだし、それから、ちい兄さんがあんな風になっちゃってるのも、せい子さんも三平叔父さんも、お父さんだってそうだと思うの。或る意味では誠兄さんにしたって――みんなみんな、そうだわ。重い荷物の
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