たって言ってますけど。
圭子 ……どれ位、中にいらしったの?
双葉 一年と、五カ月ばかりだったかしら。(圭子のきざんだ菜をアルミのボールに取って、塩をふりかけて、もむ)
圭子 ……じゃ信子さんとは、とうとうお逢いにならなかったのね?
双葉 ええ、兄さんの出て来たのは、八月の末ですから。
圭子 戦争中、やっぱり、そんな風な、なんかなすっていたんですの?
双葉 さあ、雑誌や新聞の仲間の人達と時々集まって、研究会みたいな事をしていただけじゃないかしら。ソヴィエットの通信員の人が、その会に二三度来たって言うんだけど、それも外国の情報を聞くと言った程度だったんですって。
圭子 ……しかし、たったそれ程の事で一年五カ月。――それも戦争がこんな風にならないでいれば、いつまでだったか……とにかく、あの時分と来たら、誰も彼も頭がどうにかなってしまっていたのね。
双葉 そう。……(もんだ菜に水をかけてかきまわし、その水を流しへこぼす)……だけど、誰も彼も頭がどうにかしているのは、あの時分と限らないじゃないかしら。今でもやっぱし、形こそ違え、同じ事じゃないかしら。……私はそう思うの。――つまり、もともと私た
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