か言おうとするが言えず、ユックリ歩いて出入口を外へ)
双葉 電燈のことは、ちい兄さんにまかしとおおきになったら――
柴田 なに――欣二には安全器の場所がわからんだろう。(消える)
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(それを見送って炊事場に立っている双葉の顔が、薄暗い中に白くボンヤリ見える。しばらくしてそれがフットかげったのは、両手が顔を蔽うたのである。……上手扉から手に洗った菜を持った圭子が入って来る)
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圭子 はい、これ位でよろしい?
双葉 ……(圭子に気付いて、クルリと棚の方を向き、炊事道具をコトコト言わせる)すみません、お客さまを使ったりして。
圭子 あらあ、たいへん! これ、もむんですの?
双葉 (手を出して)ありがとう。
圭子 いえ私にやらしてよ。(そこに有るマナ板の上にそろえてのせる)ほうちょうは?
双葉 ……(ほうちょうを取って渡す)三平叔父さんは――?
圭子 誠さんと畑の所で話していらっしゃるわ。(コトコトとほうちょうの音)……誠さん、なんだか、とてもお痩せになりましたわねえ。
双葉 そうかしら? でも、あすこから出て来た当座に較べると目方など、とてもふえ
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