本の苦しみは自分一人で背負っていると言ったツラだ。……下っ腹がヒクヒクするんですよ、そんなものを見ると。……ヘドが出らあ。ツバ吐《ひ》っかけてやりたい。
双葉 ……兄さんの、キチガイ!
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(間)
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欣二 コーフンするな、フー公。……はは。暗くなっちゃったなあ、電燈はつかないの?
柴田 ……(ポツリと)ああ、ヒューズが飛んでいたのを忘れていた。
欣二 どこんです?
柴田 もとの応接室の方だ。あすこから此方へ引いてあるから。(立つ)
欣二 じゃ外に廻らなくちゃ駄目だな。(立つ)ヒューズは――無いんでしょう? 焼跡から銅線でも拾って来るか。(奥出入口の方へ)
柴田 いや私がやろう。――(フラフラする歩きつきで奥の出入口へ)
欣二 いいんです。(父をわきへどけて奥の出入口から出て行く)
柴田 ……(欣二の後を追って出て行きかけた足をとめて、此方を見て)双葉。
双葉 ……?
柴田 それで――食卓の上に眼をやり、次ぎに上手扉の外を見て)みんなに有るかな?
双葉 けさ、ふかしたパンが有りますから。……足りない分は、私達が少し減らせば――。
柴田 ……(何
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