、だめだ。いくらお前が悪くなったふりをしても、私はお前の父親だ、ごまかされはしないよ。お前はやっぱり、内の欣坊だ。中学から高等学校まで、殆んど首席で通して来た――気のやさしい、曲った事のきらいな柴田欣二だ。もう、よいかげんに、つまらない事をして歩くのも、やめておくれ。
欣二 ……(不意に黙りこむ。間。――戸外からかすかに流れて来る三平の「アイアイアイ」の歌声)
柴田 え? お前達青年がシャンとしてくれないで、これからどうなる? この国のなにもかも――やりなおしが、うまく行くか行かぬか――いっさいがっさいが、お前達にかかっている。負けて倒れた人間が自分の非をハッキリと認めると同時にだ、自分のいのち、自分達のいのちの在りどころに自信を持つ。この国の、民族のいのちの正当さを掴むのだ。それには青年の力が必要だ。……私のこういう気持、わかるね? 考えてくれ。お前のことを、なによりも、誰よりも大事にかけて私は――ねえ欣二。
欣二 ……(ケロリトした調子で)お父さんだってヘドを吐くじゃありませんか。フフ! ヘドだ。鼻もちがならん。……どいつもこいつも黄色い顔の中から、モグラモチのような眼をして……日
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