しになるよ。
双葉 私はそうは思わないわ。第一、叔父さん、この家のほかに行く所無いじゃないの。もしひぼしになるんだったら、みんな一緒になったらいいんだわ。(炊事場の隅でコトコトとまだ何かの仕度をしながら)
欣二 おせいさんにしたって、そうさ。――見ろ。厨川ってえ男は出征してたってえじゃないか。待ってりゃいいんだ、五年だって六年だって。――それをいくらズットせんになにが有ったからって、あんなガウチョとケロリと出来ちゃってさ。
双葉 嘘、そんなこと! 三平叔父さんがそんな事言って、えばってるだけだわ。そんな――とてもとても、せい子さんて人、やさしい、良い人よ。やさしくって、弱くって、だもんだから、何にでもキツイ事ができない。つい、ズルズルと、流されちもうんだと思うわ。言って見れば、気の毒な方よ。
欣二 豚あ、みんな気の毒かね? 気の毒ついでに、兄きまで引っかけるか? ぜんたい、誠兄さんも兄さんだよ、あんな女に引っかかるなんて――
双葉 引っかけたなんて、そんな事ないわ。
欣二 じゃ兄きの方が引っかけた? 尚、悪いや。
双葉 違うの。私には、大兄さんがせい子さんに好意を持つの、わかる。きれい
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