中に含まれているトゲに気附かぬふりで)そんな事ぁないさ。
欣二 ついでの事だ、あっちでもこっちでもムチャクチャに騒いで、なにもかもガタガタになって見ないかなあ。面白いじゃないか。
誠 ……(黙って校正にかかる)
圭子 (三平と柴田にかけて)間もなく、信子さんの一周忌でございますわね?
柴田 はあ、いや、まあ――
圭子 クラス会の方、どなたか見えますかしら?
三平 ああ、信子と、あなた、同じクラス――? 医学校の――?
圭子 いえ、女学校でいっしょでしたの。もっとも私は三年でよしたもんですけど、それまで仲よくしていただきました。信チン――皆でそう言って――以前から、あんなにおとなしい、しつかりした方が、どうしてまたって皆でそう話し合ったんですの。いえ、あの方なら、そんな気持におなりになるにちがいないと言う人もいますけど……けっきょくの所、わかったようでいて、よくわからないんですの。あんまりアッサリとあっけなくて、なんですか――
欣二 (クルリとそっちを向いて)おい君、姉さんの事言うなあ、よせ!
圭子 ……どうして?
欣二 どうして?……聞きたきゃ、てめえのマタグラに聞けよ。(端麗な顔を歪
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