さい。(西洋風にていねいに椅子をすすめる)
圭子 はあ。(帰ろうとするでもなく、椅子にかける)
欣二 (扉の近くへ来て、自然に、机にかがみこんで校正をしている誠を目に入れて)兄さん、チーズ食べない?
誠 うん。(頭をあげない)
欣二 兄さんとこじゃ、工場の方に社長派の連中が、だいぶもぐり込んでしまったそうじゃないの?
誠 …………。
欣二 社長派の方でも、いよいよ本腰を据えたらしいね。暴力団などにもわたりを付けたんだって?
誠 そんな事ぁないだろう。……僕ぁ雑誌の編集の方だから、新聞の争議から言やあ、今のところ少しわきに寄ってるんで、よくは知らんが……(欣二の方を振向いて)君ぁ、どこでそんな事聞いた?
欣二 ううん、チョットそんな噂でね。……だけど、いよいよとなりゃ、兄さん達もいっしょにやるんだろ?
誠 そうさね。……しかし、まだそれ程でもないだろう。
欣二 だって、兄さん組合の委員の一人なんだろ?
誠 うん、まあ。……だけど、お前なんでそんな事言うんだい?
欣二 なんで?
誠 ばかに気にするじゃないか?
欣二 ……(笑って)僕がその事を言うと、よごれでもするかね?
誠 (相手の言葉の
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