。(頭は下げないで、胴なかをクネクネさせ上眼使いに相手の顔を正面から見ながら眼に物を言わせる式のお辞儀)しばらくでございました。
柴田 ええと、たしか――(誰だかわからないで、びっくりしている)
欣二 ははは。
圭子 ……(柴田に)私、ズットせん、信子さんとこに寄せて貰っていました加藤――
柴田 ああ信子のお友達の――
圭子 圭子と申しますの。
欣二 コじゃなくって、ケイトだろう。ケティとも言う。(ポケットから小さな紙包みを出し、紙をはがして父の前に差し出す)お父さん、食べて下さい。
柴田 (ドギマギして)なんだ?
敬二 チーズ。買ったんじゃない、貰ったんだ。
圭子 (色っぽく欣二を睨んで)おぼえていらっしゃい、欣二さん!
欣二 なんでもいいから気取って、はずかしがったりして見せるのはよせって言うんだ。かん違いはしない方がいい。僕ぁ、ただ島田の松の後を追って病院へ行ったら、そこに君が青くなって顫えているから一緒に連れて来たまでだよ。
圭子 悪うござんしたねえ一緒に来て。それじゃ私ぁ出て行ってよ。
欣二 ふん。(わきを向いて三平に)双葉は?
三平 そこに居る。(圭子に)まあまあ、おかけな
前へ
次へ
全142ページ中60ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング