等のワイシャツに、麻のズボン、レーンハットに青い靴下、背広の上衣は脱いで左腕にかけている。顔つきも身体つきも、殆んど男装した若い女のようにやさしい青年)
[#ここで字下げ終わり]
柴田 ……お帰り。
三平 どうした、欣二?
欣二 (ニコニコ笑って)ええ。……(自分の入って来た出入口の方を振返って)おい君、はいりたまえよ。
三平 ……[#「……」は底本では「…‥」](誰か出て来るかと思って同じくそちらを見るが、誰も出て来ないので)誰だえ?
欣二 ううん。……はいれよ、サッサと。(言い捨てて自分は食卓の方へ行き、帽子を脱ぎ、上衣といっしょに食卓に置き、椅子にかけて、父親の顔をむさぼるように見る)
柴田 誰かお客さんかね?
欣二 お父さん、また、痩せちゃった。
柴田 うむ? いや……(頬を撫でる)
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(そこへ、出入口から圭子入って来る。思い切ってドギツイ、レンガ色の化粧をして真紅に唇を描き、はでなスーツに絹のストッキングに、大型のハンドバックを持った若い女。少しきまり悪いのをかくすために、かえって馴々しすぎる表情)
[#ここで字下げ終わり]
三平 やあ!
圭子 今日わあ
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