ロボウ――ひどいわあ! まだ、鼠のシッポほどにもなっていないのを。おお、おお、代代の聖人様! おしりをつねりたまえ日本人の。(言いながら、手は野菜をきざみ、それを大きな鍋に入れ、バケツの水を注ぎ、ザブザブと洗って、水をゆすぎこぼし、又水を入れてふたをして置き、さてそれから七輪に火を燃すべく、薪を取って手斧でコツンコツンと割る。既に夕飯の支度に入っているのである)どっこいしょと!
三平 みんなドロボウになったのだな。二三日前も電車の中で三十恰好のりっぱな男が二人で工場へ出て働くよりか闇をやっている商人や百姓を脅迫して物資をかっぱらって来るのが率が良いと言う話をしているのさ。(その間に双葉は七輪に火を燃しつけて大きい鍋をかける。その煙)それが、なんと、ぐるりの人がチャンと聞いている電車の中で、かくべつ声を小さくするわけでもない。ちょっと、これには感服した。…〔Engan~ado como a un nin~o, ay, ay, ay!〕
双葉 (三平の歌に合せて)Ay, ay, ay!
三平 Pero nunca se lo digas!
双葉 だけど、せい子さん、どうしたんかな? 早く帰っ
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