……いやさ、あれは全体、何を言っているのだ? 私にどうしろと言っているのだ? ……(気が抜けたように空を見ている両眼から涙が流れる。それを拭きもしないで、ボンヤリ坐っている)
双葉の声 ……兄さん、そっちい行って、カボチャの根っこの所を、ふんづけちゃ駄目よ。兄さんてば!――(言いながら上手扉から入って来る。手に畑で採ったふだん草やサツマ芋の葉などを水で洗ったばかりで滴のたれているのを持っている。炊事場へ行きながら)叔父さん、カボチャの花は食べられるんですって?
三平 うん?……そりゃまあ、食って食えない事もなかろうが――
双葉 スープに入れたら綺麗だろうと思うの。
三平 スープか……
双葉 (野菜を、マナイタの上で揃えながら)サツマイモのはじん所、お父さん掘ったんですか?
柴田 サツマイモ? いやあ――(まだボンヤリしている)
双葉 一番向うのウネの五本ほどひっこ抜いてあるの。じゃ、せい子さんかしら。(父の方を振返って見る)
柴田 (やっと我れに返って、少しドギマギして)いやあ――おせいさんも、掘りはせんだろう。
双葉 ……でしょう? まだ、実なんか入っちゃいないんですもの。じゃ又、ド
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