下げ終わり]
三平 ……(先程からジロリジロリと誠の方を見ながら鼻毛を抜いていたが)ふ――む……いかんなあ。
柴田 …………
三平 どう言うんだんね?
柴田 ……う?
三平 いやあ、あれはどうも、此処が(と自分の胸を指して)だいぶ進んで来たんじゃないかなあ?
柴田 ……?
三平 ハハ、どうです、あれにも早くワイフを持たしてやらんといけんたい。(脈絡の無い事を平気で言ってニヤニヤする)
柴田 ……(再び自身の考えの中に落ちてしばらく黙っていてから)私ぁ、そんなにむごく扱ったかなあ?
三平 なに?
柴田 いや……咲子をさ。
三平 姉さんを? いやあ、そんな事あ、ありませんよ。私の方へはズーッと手紙をくれていたから、知っている――姉さんはすべてに満足して、幸福に――
柴田 いや、咲子にしても、信子にしても……それから誠にしても双葉や欣二にしてもだ、これだけ私は気にかけて――正直のところ、あれたちが、うまくやって行くためになら、もし必要とあれば、自分の手足をもいで食べさしてやってもよいと思っている。
三平 やあ、そいつは、しかし、まずいでしょうな。ははは。
柴田 うむ?(相手の諧謔がわからぬ)
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