の扉から入って来る)
[#ここで字下げ終わり]
柴田 ……ひどいもんだねえ。ふだん草《そう》が、こないだから、こら、こんなになっちもうから、へんだと思っていたら、油虫を蟻がかついで来ちゃ、取りつかして食わしている。(言いながら炊事場へ行って、そこの棚に野菜を置く)
三平 は、は、ははは――なに、油虫だって?
柴田 う?(はしゃいで笑う三平と、青い顔をして三平を見つめている誠を見くらべる)――どうしたね!
三平 やあ、はは、なあにね、私がさ、南米あたりで邦字新聞を出したり、いろんな代理店をやったりして、ゴロゴロして歩き廻りながら、もっぱら、この色ごとと酒の修業にどんだけ精魂を傾けて来たかと言う事をだねえ、誠君は知らんらしいからねえ、年はとってもまだまだ若い者には負けんから、お望みとあれば――
柴田 ははは、なにを、つまらんことを。……そいで、どうだね、役所の方は?
三平 やっぱり駄目ですよ。てんで、なっちょらんたい! これが二十回近くもお百度踏ましといて、いまだに責任のある返答のできる役人が現われんのじゃから。まるでどうも、日本人はホッテントット以下の人種になってしまったらしい。お気の毒
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