ーの上にじかにゴロリとあおむけに寝る)疲れているもんだから――(軽いせきをはじめる)
清水 はあ、いや――。(その時、同じ上手の扉の、誠が入った時にしめ切らないで少し開いていたのを、外からスッと押す片手が見える)
声 ただいまあ。……(その手が、からのリュックサックを室内に突き入れながら)兄さん――誠兄さん!
誠 ……おい。――双葉か?
声 やっぱり、兄さんだった。……駅んとこで、ガードの下を歩いて来るの、そうじゃないかと思って、急いで来たけど……(外で靴をぬいだり、バタバタと着物のほこりをはたいたりしながら)……駆け出そうと思っても、膝がガクガクしてだめなの。……(言いながら、次女の双葉が入って来る。簡単なブラウスに男のズボンをはき、左手にズック靴、右手の手拭いでズボンのすそを払いながら)足に豆が出来ちゃったわあ。アラアの神よ代々の聖人様よ……(言いながら靴を扉のわきに置き、食卓の方を見ると、そこに兄ではなく清水が立って此方を見つめているので、不意に口をつぐんで黙ってしまう。そして立った彼女の顔の左半面の、咲いたばかりの花のような勁《つよ》さ)
清水 ……やあ。(マジマジと相手を見つ
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