oされたフロシキへ。ハッとして、再びお光を見、清水の顔を見る。不意に顔色を変えて、背後からお光にかじりついて行く)ま、あんた! お光さん! 待って下さい! そりゃ、あんた、あんまりひどい! 先生が、いえ、この方がなにした物を、それじゃ、まるであんた!
お光 ……(かじり付いた相手を猛烈な勢いで振切る。ベリベリッと音がして、ちぎれたお光の片袖を手に握ったまませい子がはねとばされて、床の上に倒れる。その拍子にお光自身もヨロヨロとして傍の壁にドシンとぶつかって倒れそうになるが、踏みこらえて、サッと出入口へ消える)
せい ま、待って! 待って!(はね起きて)そんな事って――畜――(ヒーッと言うような叫声になって、出入口から外へ)
清水 ……(それを見送って棒立ちになっている)
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(間)
(シーンとして、床下の音もしない――。清水が青い顔で歩き出す。――柴田の居るあたりの床を見る。斜陽のためにスーと明るくなった窓。ユックリと無意識に歩く。室の中央に立停って、正面をジッと睨む。やがて床下へ向って)――先生! 先生!(床下からは何の音もして来ない。又二三歩歩いて行き食卓のわきの
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