Aみんな持って行くんですか?
お光 ……
清水 此処でも困っていられるんだから……。(相手は、すましてイモを袋に入れ終って、椅子から立つ。清水も思わず立ちあがっている)君んとこの事情も、なんだけれど……
お光 ……(どっちから出て行こうと奥の出入口と上手の扉の方をかわるがわる見やりながら)あんた、どなたですか?
清水 いや、僕あ――しかし、せめて半分位――
お光 (ニヤリとして)金さえ返して下さりゃ、こんなもん要りませんよ。
清水 (言句に詰ってカッとして歯をガチガチ鳴らしながら)そ、そ、そりゃ君! ――先生は、柴田先生は――腹が、すいて、栄養不良なんだ。先生には食い物が無いんだ。少しは――少しは、それを考えて君――
お光 私んちでも、栄養不良ですよ。(別に反感もなく単純に言い捨てて、背の幼児を一つゆすぶってから、ふくらんだ買物袋を下げて、サッサと奥の出入口の方へ。……清水は今にもそれに掴みかからんばかりに片手をブルブルと顫わしながら、しかし立っている所から動けないでいる。そこへせい子が戻って来る)
せい ……あの――(眼がお光の後姿に行き、それから清水を見て、食卓の上のほどかれて放り
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