@(礼を言われてしまって困って)いや、その――おせいさん、ひとつ、あんた、いいようにその――私あ、もうチョット、この下を、なにして――(床下に引っこむ)
お光 ……(黙って立っているせい子の顔を、光る眼でジッと見つめる)
せい ……(しばらく黙っていてから、ヒステリックに)いえ、私あ知りません! 私あ知りませんよ。私あ、此処のかかりうどに過ぎないんですから、そんな事知らないんですよ!(シャベルを持って小走りに扉から消える)
お光 ……(その後姿を見送ってから、チョットの間ジッとしていたが、清水の方をチラリと見てニヤリとして、次ぎに獣のようなすばやさで膝の上に置いていた買物袋の中へジャガイモをさらいこみはじめる)
清水 ……(それを見て口の中でアッと叫び、なにか言葉をかけそうにするが言えない。――その間もお光はサッサとジャガイモを袋に詰めている。――その時、床下で、土を叩く鈍い音がドシン、ドシンと間を置いてする。清水その方を見る。――やがて、その眼をお光に移して、苦しそうな低い声で)――君、おい君――
お光 ……(ジロリと清水を見るだけでイモをさらい込む手は休めない)
清水 それを、君あ
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