サの請負賃の残金を貰うのはあたりまえでしょう? 丸焼けになったのはお父つぁんの知った事じゃないじゃありませんか。冗談言って貰っちゃ困りますわよ。第一、八年前にお宅を建てた時分と今とじゃ、お金の値打が、まるで十分の一か二十分の一になっているんですからね、あの時の五千円と言う残金を、あなた、今の金で貰ったって、まるきり、なんのたしにもなりゃしないんだから、本来ならば月賦の金の百円を千円ずつにして貰いたいとこだって、お父つぁんなど言っている位ですよ。
せい そりや暴と言うもんです。そんな、あなた――そんな事おっしゃったって――
お光 暴だって?
柴田 まあまあ、いや、何と言っても私の方に払込む義務は有るんじゃから――
お光 そうですよ、義務が有りますよ。
せい いえ、そりゃ払わないとは誰も言やあしないけど、同じ催促するにしても、なんとかもうチット、しようが――
お光 あなた、こちらの奥さん? 奥さんじゃないでしょう?
せい ……そりゃあなた、私は――
お光 こちらの亡くなった奥さんは、ようく知っているんですからね。おとなしい、おきれいな、そりゃ良い方でしたよ。お亡くなりんなる前だって、うちの
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